ともすれば、世界の真ん中で

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『テレビの見る夢 大テレビドラマ博覧会』早稲田大学演劇博物館

「ドラマはテレビの見る夢だ。」そんな魅力的なフレーズを冠したテレビドラマの展覧会が、早稲田大学内、演劇博物館で催されています。

 

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テレビ草創期から現代まで、時代を彩ったテレビドラマの数々。それらを当時の衣装や台本、さらには映像で、時代を追って振り返る展示。スペースこそ小さいものの、白黒テレビやブラウン管など、当時の機材が光りを放つ様子は、それだけで雰囲気十分です。

テレビドラマもそうですが、映画やマンガなど、身近なメディアの歴史は不思議なものです。必ずどこかで世間一般の歴史が、同時に「私」自身の歴史として現れるポイントがあります。今回の展示は、古いものは『私は貝になりたい』『男はつらいよ』から、現代の『逃げ恥』『カルテット』まで。全ての世代の名作が紹介されています。はじめの方は、ただ展示品を見ている、美術館や博物館の品を見ているのと同じ感覚です。ところが、あるところで、自分がリアルタイムで経験していた作品が登場してくる。すると途端に、「あの頃は中学生だったなあ」とか、「ドラマに影響されて部活入ったなあ」とか、「あんな子と付き合ってたなあ」とか、「○○と一緒に観てたなあ」など。様々な自分の、その時の記憶が、映像と共によみがえってきます。

そんな、私たちの思い出に訴えかける力は、やはりテレビドラマが一番ではないでしょうか。世代を象徴する一作、という言葉が、よく当てはまります。今回の展示が素晴らしいのは、このテレビドラマの力を、決して過去のものとしてあきらめない点にあると、私は思います。現代、私たちを取り巻くメディアは多種多様です。テレビの発信力は、昔ほど大きなものではなくなりました。作品も、どうしてもテレビ黄金期のものの方が知名度に勝ります。それでも、展示では、2010年代以降の作品にも同様、十分にスポットライトが当てられています。震災後のドラマにみる主題の変化の考察などは、非常に興味深いものです。ともすれば懐古的になりそうなテーマに、しっかりと現代のシーンが盛り込まれている点。テレビドラマの夢の続きを、信じずにはいられません。